NiMHバッテリー安全注意事項
ニッケル金属水素化物
3.0 ニッケル金属水素化物 (NiMH)
3.1 NiMH の動作原理
NiMH電池の動作原理はそれらの電池内で水素を吸収、放出、電極間輸送する能力に依存します。次のセクションでは充電、放電時に起こる化学反応と過充電、過放電状態の有害作用について討議します。 NiMHバッテリーの成功は負極に使用される水素吸蔵合金(ミッシュメタルとして通常知られている)である希土類金属からもたらされています。これらの金属合金はNiMH負極の高いエネルギー密度をもたらし、結果として正極に広い容積を与えます。これは競合する二次電池に比べてより高い容量と、より長い耐用時間を得る主たる理由です。3.2 充電の化学反応
NiMH電池が充電されるとき、正極は電解質中に水素を放出します。水素は次に負極にに吸収され、吸蔵されます。反応は正極のニッケル水酸化物(Ni(OH)2)と電解質中の水酸イオン(OH¯)が結合した時に起きます。これによりニッケルオキシ水酸化物(NiOOH)が正極で生成され、電解質中に水(H2O)と一つの自由電子(e¯)をもたらします。 負極においては負極内の金属合金(M)と電解質中の水(H20) と電子(e¯)が反応し、負極に金属水素化物(MH)と電解質中に水酸イオン(OH¯)を生成します。図3.2化学式と図3.3輸送図を参照。 NiMH電池の充電中に全体の化学反応の一部として熱が発生するので、蒸気の充電反応は発熱反応です。電池が充電されるときにもし熱が効率よく放散されれば発生熱は蓄積されません。過剰に過充電されるときに非常に高い温度上昇がみられます。セクション3.4過充電と3.5過放電参照。図3.2化学式 図3.2化学式正極 | Ni(OH)2 + OH - | 充電 ⇄ 放電 | NiOOH + H2O + e - |
負極: | M + H2O + e- | 充電 ⇄ 放電 | MH + OH - |
全反応: | Ni(OH)2 + M | 充電 ⇄ 放電 | NiOOH + MH |
3.3放電の化学反応
NiMH電池が放電する時には化学反応は充電時の逆が起こります。負極の金属合金中に蓄えられた水素が電解質中に放出されて水を形成します。この水は次に水素イオンを放出し、それが正極に吸収されてニッケル水酸化物を形成します。図3.2化学式と図3.3輸送図を参照。NiMH電池にとっては水素を負極から正極へ移動、輸送するプロセスは熱を吸収し、それゆえそれは吸熱反応です。電池が過放電の状態になるまで熱は吸収され続け、温度上昇により電池内で二次反応が起きます。3.5過放電参照。3.4 過充電
ニッケル金属水素化物電池は酸素再結合機構を用いて設計されており、過充電により生ずる圧力の蓄積を遅らせるようになっています。電池の過充電は正極において1)電解質からの水酸イオンと反応するニッケル水酸化物がもはやなくなった時2)酸素を発生し始めた時に起きます。酸素はセパレータを通して拡散し、負極は酸素と蓄積した水素を結合させ水を生成し、電解質中に過剰な水を形成します。この酸素再結合が、正極で酸素の発生する速さよりも遅いスピードで起こると過剰の酸素(気体)を蓄積し、電池内の圧力の増加を招きます。過充電の第一段階から守るためにNiMH電池は負極が正極よりも大きな容積(または活性物質)を持つように構成されています。これは負極に発生した酸素と効果的に再結合する活性物質を多く持つことにより、圧力の蓄積を遅らせることに役立ちます。図3.4利用可能容積図参照. NiMH電池の過充電は容量とサイクル寿命の永久的な損出をもたらします。電池が圧力の蓄積が始まるまで過充電された場合には、温度上昇がみられ、セパレータの電解質の損出を生じます。セパレータの電解質の損出は(またはセパレータが乾燥しきった)水素の適切な電極間輸送を阻みます。さらに、電池がひどく過充電され過剰な量の酸素(気体)が発生した場合、正極の端末の安全排気口から圧力が放出されます。これは電池内の適切な機能に必要な要素を取り除いてしまいます。過充電のダメージから守るために適切な充電終了が利用されます。セクション3.8.2NiMH充電終了参照。 ず3.4利用可能容量図3.5 過放電
NiMH電池の過放電には2つの段階があります。第一の段階は、正極の活性物質が十分に消耗して、水素ガスを発生し始めることが含まれます。負極は活性物質(金属水素化物)を多く持っているので、正極で発生した水素ガスを吸収する能力を持っています。負極で吸収されなかった水素は電池内に圧力を蓄積し始めます。第二段階は、負極の活性物質が十分に消耗した時に始まります。両極が十分に消耗したら、負極は酸素を吸収し、使用できる容量の損出の原因となります。 NiMH電池の過放電は電極に過剰な気体発生をもたらし2つの形態で永久的なダメージを与えます。一つ目は酸素が水素吸蔵場所を永久的に占めると、吸蔵容量が減少します。二つ目は過剰な水素が安全排気口から放出され電池内の水素量を減少させます。過放電によるダメージから守るために適切な放電終了が利用されます。図3.7.4NiMH低電圧解放、または電圧カットオフ参照。3.6定格能力
電池が短時間に使用できる最大の定格は電池の構造や温度やパックに組み立てられる方式に依存します。セクション3.7.1NiMH容量を見れば明確になります。3.7 NiMH 放電特性
NiMHバッテリー(電池およびバッテリーパック)の放電特性は多くの要素に依存します。これらの要素には、容量、電圧、放電レート、放電終了(または電圧カットオフ)、マッチング(バッテリーパック内の電池の)、内部抵抗や温度が含まれます。3.7.1 NiMH 容量
技術者や設計者は通常装置やデバイスを運転させるのに必要な電流をどれくらいの時間バッテリーが供給できるかに一番関心を置いています。時間の長さはバッテリーの容量と放電レートに直接比例します。Cとして定義される容量はバッテリーの電流の内容量で、(Ah)または(mAh)で示されます。バッテリーの容量は、あらかじめ決められた最終電圧に至るまで決められた定電流で放電することによって決定されます。バッテリーが最終電圧になるまでの時間にバッテリーが放電する定格電流をかけた値がバッテリーの定格容量です。それゆえ、放電定格電流が150mA、最終電圧が電池あたり1.0Vで放電時間が10時間の場合には定格は1500mAhとなります。 説明のために、バッテリーに適応される定格電流(充電または放電)は、しばしばバッテリーの定格容量Cによって定義されます。例えば、C/2(または0.5C)のレートで放電される定格1500mAhのバッテリーは一時間当たりバッテリーから750mAhで放電されます。このように、1500mAバッテリーのC/2のレートでの放電は750mAですが、これはバッテリーが2時間持つという意味ではありません。 NiMH電池に関わる最大の誤解の一つは定格容量はユーザが利用できる容量であるというものです。これは電池が等級づけされたのと全く同じレートで充電、放電された場合にのみ真実であります。 定格容量は国際電気標準会議(IEC)の文書#61436.1.3.4に16時間で0.1Cのレートで充電される電荷として定義されています。これには電池あたり電圧1.00Vまで0.2Cでの放電がなされると続いています。しかしながら、この数字は時々最大、通常および最小電池定格により複雑にされます。例えば、1000個の電池の多くは1000mAhから850mAhの範囲にあるかもしれません。その場合最大容量はたとえそのうちわずかな数しかこの容量を持たないかもしれませんが1000とされます。名目上の容量は900mAhであり、試験された大多数の電池はこの容量を持つでしょう。すべての電池は最小850mAhを満たすに違いありません。私たちは他の製造業者についても考慮すれば、この電池格付け手続きに従わなければなりません。 NiMH技術バッテリーパックの容量を試験する時得られる結果は次の項目の変化で劇的に変わります。: * 温度 * 充電レート * 放電レート * パック内の電池数 / 電池ごとの電圧カットオフの増加 パック同志、電池同志を比較する時にはこれらすべてのことを考慮しなければなりません。分極
NiMH技術の電池に電流が流れる時には電池内で化学変化が起こっています。電流に対する障害は分極として知られています。分極とは: 抵抗 抵抗分極は電流に対する内部インピーダンスです。そのインピーダンスは電圧降下に対応し、あらゆるNiMH電池の電圧プロファイルにおいても見受けられます。電流を充電している間、この電圧は電池の全体の電圧に付加されます。しかしながら、放電の間には、この電圧は電池全体の電圧から差し引かれます。電圧降下の程度は電池内部のインピーダンスと電池に流れている電流レートに(充電/放電)直接的に比例します。電池が高いインピーダンスを持つときには電圧降下は大きいです。電池に流れる電流が増えると、電圧降下は増加します。これは終了電圧をあらかじめ決定する場合には重要です。電池が十分高い電流値で放電される場合にはたとえほとんど100%の容量が残っていても、電池の電圧はすぐに1.00V以下になるでしょう。濃度 濃度分極は電池の正極、負極の表面積に直接比例します。これらの有効プレート面の表面積が大きければこの分極の減少は大きいです。これは電池自体を設計製造する間に決定され、その後はほとんど何もされません。活性化 活性化分極は化学反応を生ずるのに消費されるエネルギー量です。100%効率の物は一つもなく、あらゆる化学反応はエネルギーを消費します。分子レベルでは、温度は反応が起こるのに必要なエネルギーの量に大きな影響を持っています。一般に、すべての格付けは20-25℃で実施され、温度が上昇または下降すれば放電におけるエネルギー量は変わります。 NiMHの化学に影響を与える要素を知ることにより、私たちは首尾一貫しない結果を生ずるあらゆる変数要素を隔絶させた試験を準備することができます。 例えば、電池が0.5Cで充電され、?dVで終了します。容量試験が0.5Cで実施されるとき、放電はIEC定格の電池容量より5-7%減少することが予想されます。これは第一に放電における抵抗分極により説明され、第二に?dV充電体制に使用されるエネルギーの変化によるものです。 NiMH電池に見られる?dVの適切な値は、過電流に対する少しの余裕に違いありません。この過電流条件は電圧下降をもたらします。それは電池内の活性物質がすべて化学的に反応した時に生じ、酸素が発生し、さらに負極へ拡散します。負極は正極よりも大きく設計されていますので、この酸素拡散を受け入れますが、依然電池内に圧力は発生し、熱を発生します。さらに熱は電圧を降下させます。充電中の入力エネルギーと放電中の出力エネルギーを直接比較はできません。なぜなら入力エネルギーの一部は酸素の発生に浪費され、決して再結合しないからです。定格容量のa%を引き出すためには、私たちは放電試験の間に受け取るエネルギーを電池のIEC定格容量から計算しなければなりません。 3.7.2 NiMH の電圧 NiMHバッテリーの放電電圧プロファイルは平坦であると考えられ(図3.7.2 25℃でのC/10放電プロファイル参照)、放電レートと温度により変化します。十分に充電されたバッテリーが放電する時、電圧は約1.5Vで始まり、約1.3Vで急激な下降が続きます。電圧はプロファイルの約75%の期間、バッテリーの使用できる容量が消耗し始める第二の電圧降下まで、1.3から1.2Vの間で停滞します。この時点が安全な電圧レベル(5.4定電圧解放または電圧カットオフ参照)で放電電流が終了するところです。放電レートが上昇すると、全放電プロファイルは抵抗分極(内部抵抗)による損出で低下します。高い温度では、放電プロファイルは電極間のポテンシャル(電圧)の増加により上昇します。10℃(50°F)以下の温度では、濃度分極が電圧と使用できる容量を非常に低下させます。これはバッテリー内の分子の輸送に必要なエネルギーの増加により生じます。セクション2.動作原理と構造を参照 NiMH電池の産業標準の定格電圧は1.2Vです。この値はC/10のレートで25℃(77°F)の温度で、1.0Vの最終電圧まで放電する電池の名目上の電圧です。この産業標準はバッテリーパックの定格電圧を呼称するのに主として用いられます。例えば、三つの電池が直列につながったバッテリーパックは3.6Vのバッテリーパックとして定格付けされます。図3.7.2 25℃でのC/10放電プロファイルはNiMH電池の名目上の電圧が1.2V直上であることを示します。 技術応用や計算のために、バッテリーパックの名目上の電圧は、放電を通しての平均電圧の便利な近似を提供します。名目上の電圧は、バッテリーが放電された後単純に計算されます。名目上の電圧を計算するには、バッテリーのエネルギー[Wh]を容量[Ah]で割って求めます。この計算はバッテリーが高温で放電する際には便利であることがわかります。なぜなら名目上の電圧は、それらの条件では上昇するからです。 図3.7.2 C/1025℃での放電プロファイル3.7.3NiMH放電レート
バッテリーのもたらされる容量と名目上の電圧はバッテリーが放電されるときの電流レートに依存します。NiMHバッテリーに対しては、1C以下の放電レートでは容量や電圧に意味のある影響はありません。名目上の電圧の減少は、高レートシリーズの電池を除いては、すべてのNiMH電池において1Cと3Cの間のレートの放電の時生じます。3.7.4 NiMH 定電圧解放または電圧カットオフ
放電の際に一つ以上の電池の極性反転により、バッテリーに取り返しのつかない害を与える恐れから守るために、負荷(放電電流)はバッテリーが完全に放電する前に終了しなければなりません。バッテリーから得られる全容量が得られる時点で放電を終了することにより、ダメージは回避できますが、安全電圧水準は残ります。この方法で負荷を取り除くことは、低電圧解放または電圧カットオフと呼ばれます。バッテリーの容量は、放電終了に用いられた電圧カットオフにわずかに依存します。終了電圧を低下させるまで放電を続けると、もたらされる容量をわずかに増加させますが、終了電圧が推奨される電圧カットオフよりも下回るように設定される場合には、バッテリーのサイクル寿命は減少します。次の表は1C以下の放電レートでの電圧カットオフ推奨値を示しています。: 図3.7.4電圧カットオフスケジュール直列電池数 | 定電圧解放/電圧カットオフ |
---|---|
1から6 電池あたり1V | |
7から12[(MPV-150mV)(n-1) ]-200mv |
3.7.5 NiMHのマッチング
マッチングとは、バッテリーパック内に用いられる類似の容量の個々のNiMH電池のグループ化を意味します。通常、バッテリーパック内の電池のマッチングは2%以内です。マッチングは、接続された電池の容量範囲が非常に大きくなりバッテリーパック内の一つ以上の電池に極性反転が生じる可能性を取り除きます。マッチングはバッテリーパック内の電池数が多くなるにつれ重要になります。これは一つの電池がその他の電池の平均容量よりも著しく容量が低い容量を持つ可能性によります。結果として、最小の容量を持つ電池は他の電池が電圧カットオフに到達する前の安全電圧水準でも極性反転の可能性があります。電圧カットオフに達する前に、一つ以上の電池が反転すると、性能とサイクル寿命が減少します。.3.7.6 NiMH 内部抵抗
NiMH電池の内部抵抗は電池サイズ、構造、化学成分に依存します。望む性能特性を得るために種々のNiMH電池には様々な異なる物質が使用されています。これらの物質の選択はまた、電池の内部抵抗に影響を与えます。NiMH電池の種々のサイズ、構造、化学物質は異なるので、標準として定義される一つの内部抵抗値は存在しません。各電池の内部抵抗は1000Hzのmで測定されます。3.7.7 NiMH の温度
NiMHバッテリーの最適な容量とサイクル寿命を得るための、標準バッテリーを放電する場合の推奨温度範囲は0°C (32°F)から40°C (104°F)です。NiMH電池の吸熱放電特性により、放電性能は高い温度では適度に増加しますが、サイクル寿命は減少します。低い温度では、性能は電池の分極により非常に減少します。セクション3.7.7参照。これは輸送能力(電極内のイオンの移動能力)の減少によって生じます。ほとんどのNiMHバッテリーに対して、次の図表はC/5放電レートでの容量に及ぼす温度の代表的影響を示します。 図3.7.7放電容量対温度放電対温度3.8 NiMH充電特性の概要
NiMHバッテリーの充電、再充電(電池およびバッテリーパックの双方)はバッテリーから奪われた、あるいは放電されたエネルギーを元に戻すプロセスです。サイクル寿命と同様にバッテリーの性能は、効果的な充電に依存します。効果的充電の3つの主要な基準は: * 適切な充電レートを選択する * 適切な充電終了技術を選択する * 温度を制御する3.8.1 NiMH充電レート
NiMH電池の容量が増加するにつれ、高速充電の要求が増えています。これは高い充電レートにつながり、過充電の潜在的ダメージを最小にしながら完全充電を確保することが求められます。低速の充電は依然信頼性のある方法ですが、あるタイプの終了がない限り、すべてのバッテリーが低速充電できるわけではありません。あるNiMH電池の化学物質は高い容量を持ち、良く普及した高速充電方法に良く適しています。3.8.2 NIMH 充電の終了
NiMHバッテリーの充電を適切に制御することは、最適な性能を得るためには重要です。充電制御はバッテリーを過充電しないように適切な充電終了を取り入れます。バッテリーの過充電とはバッテリーに入るエネルギーをこれ以上受け入れる(蓄える)ことができない状態を意味します。結果として、電池内部に圧力や温度が蓄積されます。電池が過充電状態のままでいると、特に高い充電レートでは電池内部に発生する圧力は正極の末端にある安全排気口を通して解放されます。これはバッテリーに、サイクル寿命と容量を減少させるダメージを与えます。 バッテリーにダメージを生ずることを防ぐため、採られるあらゆる充電制御方法において充電終了は最も重要な要素の一つです。充電性制御は次に示す充電終了技術の一つ以上を利用しています。3つの主要な充電終了技術は、時間、電圧そして温度です。3.8.2.1 時間
時間に基づいた充電制御技術は、あらかじめ決められた時間の後にバッテリーの充電を終了します。この技術は、過剰な過充電を避けるために低速充電をするときに使用され、すべての高速充電方法の二次終了バックアップとして使用されます。3.8.2.2 電圧
NiMHバッテリー(セクション3.8.3の充電終了専門用語参照)充電電圧プロファイルが予想可能であるので、電圧に基づく充電制御技術は魅力的です。NiMHバッテリーの充電電圧プロファイルは、バッテリーの充電状態に関わらず一貫しています。しかしながら、電圧に基づく充電終了技術は一般にバッテリーが過充電状態に達した後に生じます。さらに、電圧に基づく技術はC/4以下のレート時には採用できず、RFノイズにより間違った終了に陥りやすいです。温度が非常に高くなると、充電を終了させるための温度測定装置も含めることが必要になります。そのような装置にはサーモスタットやPTCリセット可能ヒューズなどが含まれます。ピーク電圧検出 (PVD)
電圧に基づく充電終了の推奨される技術は、ピーク電流検出またはPVDです。この技術は、バッテリーがピーク電流に達して、過充電になった後(セクション3.8.3充電終了専門用語参照)に電圧の下降を検出することを含みます。他の電圧充電終了技術よりも過充電のリスクが小さいので、この技術が推奨されます。バッテリーに対する本質的なダメージを防ぐために、終了前の電池あたりの最大電圧下降3mVでバッテリーの過充電量を制限することが推奨されます。さらに、感度を上げるためには充電器ICのサンプリングレートの頻度を上げます。ネガティブデルタ V (-?V)
ネガティブデルタ V (-?V)はPVDと同様に、バッテリーがピーク電圧に達した後のバッテリー電圧の降下を検出する同じ概念に従っています。違いは充電終了前の電池あたりの電圧変化または下降が3から5mVに増えている点です。この技術により、バッテリーは過充電状態に長時間曝されることになり、通常は推奨されません。セクション3.8.3充電終了専門用語参照。3.8.2.3 温度
充電中のNiMHバッテリーの発熱性質は、特に過充電直前および過充電状態にバッテリーが充電されるときに発生する熱を意味します。温度に基づく充電終了は温度上昇を検知し、バッテリーの温度がフル充電に近づいたときに示す温度に到達した時に終了します。過充電を検知するのに信頼性が高いのでこのタイプの充電終了は推奨されますが、充電未完了の状態での充電終了や、バッテリーが非常に高い温度環境に曝されるときに過充電検出を誤動作することを避けるために充電回路の設定温度の選択には注意が必要です。温度変化 (?T)
温度または?T の変化は充電中に開始(周囲)温度からのバッテリーの上昇温度差を測定する技術です。充電は温度変化の割合があらかじめ決められた値に到達した時に終了されます。セクション3.8.3充電終了専門用語参照。温度変化/時間変化 (dT/dt)
すべての高速充電方法において推奨される温度に基づく充電終了技術はdT/dt (セクション6.3充電終了専門用語参照)です。この技術は温度Tの時間t変化をモニターし、最も正確であると考えられています。なぜなら他の技術よりも早く過充電の始まりを検知するからです。dT/dt 温度終了の基準線は1分あたり1℃ですが、パックのデザインにより変わります。dT/dt 終了を使用する時にはバッテリーを充分充電するためにトップオフ充電が薦められています(3.8.6.5トップオフ充電参照)。温度カットオフ(TCO)
温度カットオフまたはTCOはdT/dt やPVD を使用したすべての高速方法に求められる二次終了です。この技術はバッテリーの絶対温度に基づいており、あらゆる充電終了技術の故障の際の破壊的な発熱を避けるためのフェールセーフ戦略としてのみ推奨されます。3.8.3充電終了専門用語参照。3.8.3 NIMH充電終了専門用語
Figure 3.8.3 NiMH 充電終了専門用語充電終了3.8.4 NIMHの温度と充電効率
推奨される充電温度は10°C (50°F) から40°C (104°F)の間です。NiMHバッテリーが過充電や外部からの熱源により高温(40°C, 104°F 以上)に曝されると、充電効率(充電入力の基本単位ごとの貯蔵される電池容量の増加)は減少します。充電効率の減少を避けるために、過充電で発生する熱量を制限する充電制御方法が採用されなければなりません。さらに、バッテリーを熱源の近くや、冷却や換気が限られている密室に置いたりしないことが重要です。 10°C (50°F)以下の温度でも、効率は減少し、充電に要する時間の増加をもたらします。低温度は輸送能力(電極の中をイオンが移動する能力)を抑制し、低い充電効率を生じます。(セクション3.7.1NiMHの容量と構造;定格能力参照)0°C (32°F) 以下での充電は、お薦めできません。3.8.5 NIMH の充電方法
すべての充電方法がNiMHの電池化学物質に推奨されるわけではありません。なぜならそれらは同じようにデザインされていないからです。ある望まれる性能特性を達成するために、異なる物質が種々のNiMH電池に使用されています。これらの物質の選択もバッテリーの充電特性に影響を与えます。それゆえ、いかなる方法も各充電方法に特有の注意されるべき問題を生じます。推奨される充電電流と充電終了は図3.8.5充電方法仕様参照。 図3.8.5充電方法仕様受電方法 | 充電電流 | 充電終了 | コメント | ||
---|---|---|---|---|---|
低速 | 0.02-0.1C | 1. なしまたはタイマータイマー | タイマー 160%C基準. | ||
標準 | 0.1C | 1. タイマータイマー | 設定16時間 | ||
時間 | 0.1-0.2C | 1. タイマー 2. TCO = 55°C | 0.1C で160%Cから 0.2C で120%C基準 | ||
急速2 0.25-0.5C 1. PVD, または dT/dt, または | ?T, および2. タイマー,および | 3. TCO = 55°C PVD = -?V of 3-5 mV/cell | dT/dt = ~1°C/1 min 上昇. | タイマー0.2C で140%C から0.5C で120%C基準 | |
高速2 0.5-1.0C 1. PVD, または dT/dt, または | ?T, および | 2. タイマー, および | 3. TCO = 55°C PVD = -?V of 3-5 mV/cell | dT/dt = ~1°C/1 min 上昇. | タイマー125%C基準 |
メンテナンス0.002-0.008C 1. なし5-10%C 一日当たりC/128 から C/512 パルス推奨 | |||||
1 すべてのバッテリーが終了なしで充電されるわけではない。 2急速/高速充電手順参照(セクション3.8.6) |
3.8.5.1低速充電
充電時間が問題にならず最大の再充電容量が求められる場合には、低速充電方法がしばしば使用されます。この方法は、0.1C未満で、16時間以上の充電が用いられます(図3.8.5充電方法仕様参照)。高速充電に良く適したNiMH電池化学物質の最近の開発により、すべてのNiMHバッテリーに対しては、低速充電は推奨されません。3.8.5.2 標準充電
この方法はほとんどのNiMH電池化学物質に対して使用できます。標準充電は充電レート0.1Cで16時間を用いた単純なシステムです(図3.8.5NiMH充電方法参照)。充電レートが低く、充電は16時間後に終了されるので、過充電と温度上昇のリスクは少ないです。この方法の悪い点は充電開始時のバッテリーがどれだけ充電されているかを検出できない点です。したがって、60%充電深度のバッテリー(DOD)でも40%充電状態(SOC)でもこの方法を用いて充電すると、充分放電されたバッテリーと同じ充電量に見なされます。これは時間終了が生じる前に部分的に放電したバッテリーが過充電されることになります。3.8.5.3 時間変化
より速い充電方法ではバッテリーは通常6から16時間で充電されます。NiMHバッテリーを充電するこの方法は選択する前に最大の注意を必要とします。この方法は高速な電流レートを使用しますので(3.8.5充電方法仕様参照)2つの終了方法:時間とTCOが必要とされます。2つの終了方法の後者は充電サイクル中の温度検出をするためにサーミスタを含めることが必要となります。時間充電終了だけが使用される場合には、特に部分的に放電されたバッテリーがこの方法で充電される場合には過充電に至ります。あるタイプのNiMH電池物質に対しては、これは著しくバッテリー性能を劣化させます。.3.8.5.4 急速充電
急速充電方法は短い充電時間を求めるアプリケーションには良い方法ですが、バッテリーの容器室の熱放散は良くありません。急速充電方法は通常2.5から6時間で充電レート0.25Cから0.5C(図3.8.5充電方法仕様参照)を用いて充電しますこの方法はPVD、- ?V、 dT/dt または ?T と時間バックアップを併用して使用されます。充電の詳細についてはセクション3.8.6急速/高速充電手順を参照。このシステムは通常、過充電対策を補償するために温度バックアップを使用します。この充電方法の利点はバッテリーがどのような充電状態にあろうとも安全に充電する能力です。言い換えれば、部分的に放電されたバッテリーが過充電のリスクなしで充電できます。このタイプのシステムの短所は、充電器が複雑になることと高価になることです。3.8.5.5 高速充電
時間が限られていて、良い熱放散が得られれば、高速充電方法は最も良いアプローチです。高速充電方法はバッテリーを2.5時間以下で充電します。急速充電方法と同様に、この方法は充電レートを増加させ、3つの個別の充電終了を必要とします(図3.8.5充電方法仕様参照)。あるNiMHの高容量バッテリーは1.0C定常充電レートを取り扱いません。現在、従うべき良い規則は1.0Cまたは3.0Ams以上の定常充電を使用しないことです。充電の詳細はセクション3.8.6急速/高速充電手順参照。急速充電と同様に、高速充電方法の利点は短時間のうちにバッテリーの充電状態がどのようであっても安全に充電する能力です。短所もまた、充電器の複雑化と高価格化です。3.8.5.6 メンテナンス充電
先の6つの方法とは違い、メンテナンス充電方法は放電したバッテリーを容量いっぱいまで充電する手段とは見なされません。むしろこの方法は、バッテリーが使用されないときの自己放電の発生に対する対抗策に使用されます。セクション3.9バッテリーの保管参照。3.8.6 NIMH の急速/高速充電手順
次に示す手銃はNiMHバッテリーを高速または急速充電する6つのステップの概要を示します。これらのステップは充電器チップ製造業者がチップの中に取り入れようとする内容についての洞察を提供します。3.8.6.1 初期充電
バッテリーを高速または急速充電する前に、トリクル充電レートが推奨されます。C/10-C/50のパルス状のトリクル充電から開始することは2つの理由で良いことです。一つ目はバッテリーが冷めているとき温度を上昇させ、二つ目はバッテリーや充電回路に問題がないか検証することです。3.8.6.2 温度測定
高速または急速充電を開始する前の温度は10°C から40°C の間でなければなりません。これはトリクル充電のステップの一部としてなされます。バッテリーが低い温度に曝されると、高速充電が開始される前にバッテリー温度は10℃以上にまで温めなければなりません。その上、dT/dt パラメータは冷めたバッテリーの高速充電の初期に到達して、充電未完了のまま終了してしまうことに特に注意しなければなりません。多くの充電器は「低温度抑制」を取り入れ、この事象を無効にします。3.8.6.3 ピーク電圧測定 (PVM)
バッテリーパックの電圧測定もまたトリクル充電ステップの一部です。パックの電圧測定(PVM)はバッテリーが適切な電圧水準にあり、充電できる電流が存在することを検証するために使用されます。時間(数秒から10分)と電圧(1.1Vx電池数)は使用される電池のタイプと数に依存します。バッテリーの電圧が設定時間内(通常約20分)に到達しない場合、充電は終了されます。PVMに対してはパルス状の充電レートC/10 からC/50が推奨されますが、定常充電レートC/10 からC/50が使用されます。3.8.6.4 急速/高速充電
急速充電または高速充電方法は3つのモードの終了が必要になります。: # PVD, または ??V, または dT/dt, または ?T # タイマー # 温度カットオフ (TCO). 充電レートの情報は表3.8.5充電方法仕様を参照。3.8.6.5 トップオフ充電
トップオフ充電は高速または急速充電がバッテリーを十分に充電できないときに限り使用されます。これはあるdT/dt とT終了の時発生します。dT/dt またはT 高速充電を用いる前に、デバイス内部で充電および終了パラメータを試験することが求められます。定常電流トップオフ充電はエネルギーを取り除く傾向があるので、トップオフ充電はパルス充電で行われるのが最適です。トップオフ充電は時間により終了し、C/10 からC/40 の急速充電のレートです。3.8.6.6 メンテナンス
メンテナンス充電は充電器から取り外されるまでフル充電を維持します。 バッテリーが充電されてから最初の24時間は、バッテリーの自己放電により約5%損出します。この自己放電に対抗するために、C/128レートでの標準メンテナンス充電が設計されています。あるNiMH化学成分は最大C/64レートまでのメンテナンス充電を取り扱うことができます。低レートでの連続充電はあまり効率的ではなく、それゆえパルス充電が推奨されます。3.9 NiMH バッテリー保管概要
保管や未使用のまま、長期間経過した再充電可能なバッテリーの容量や電圧は減少します。これは通常自己放電と呼ばれる電池内部に発生する化学反応により生じます。自己放電の影響は、未使用のバッテリーが適切に保管されると最小にすることができます。NiMHバッテリーの適切な保管は温度管理と在庫管理が求められます。3.9.1 NiMH 保管温度とバッテリーサイクル
温度は、未使用のバッテリーの自己放電レートに影響を与える主要な要素です。保管温度が上昇すると、自己放電レートは増加し、バッテリーの保管できる最大期間が短縮します。最大保管期間が正確に決定されるように温度管理のされた環境でバッテリーが保管されることが最適です。図3.9.1保管温度対保管時間はNiMHバッテリーが保管できる保管温度範囲とサイクルに供される前に未使用のまま置かれる最大時間を示します。 図3.9.1保管温度対保管時間保管温度 | 最大保管時間(サイクル頻度) |
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40°C から 50°C (104°F から 122°F) | 30日未満 |
30°C から 40°C (86°F から 104°F) | 30 から 90 日 |
-20°C から 30°C (-4°F から 86°F) | 180 から 360日 |